健康一口メモ6月号『高齢者の肩の痛み』を掲載いたしました

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 肩の痛みというといわゆる「肩こり(首こり)」を想像される方もいると思いますが、ここでは肩関節(腕の付け根)が原因の痛みについてお話しします。肩関節が原因の痛みでは50代を中心に起こる五十肩(肩関節周囲炎)が有名ですが、これは肩関節周囲の靭帯が固くなり関節が動かなくなる病気です。しかし、高齢になると骨と骨とをつないで関節を安定させている腱板(けんばん)という筋肉が長年の使用によって擦り切れる「腱板断裂」が問題となります。
 主な症状は腕を動かしたときの痛みが出ることです。特に腕を外側に90度前後あげて上下に動かした時に出る痛みが特徴です。それ以外にも安静時の腕の痛みや、夜寝ている時の痛み、腕が上手くあげられないといった症状もあります。筋肉の一部が切れているわけですから強い痛みを想像しますが、不思議なことに実際にはほとんど症状がでていない方もいます。また、痛みの割に関節の動きがそれほど障害されていないこともあります。
 診断はレントゲンで骨の変形の有無を評価し、超音波やMRIで筋肉の状態を評価します。また、実際に肩関節を動かした時に出る痛みの状態を確認することも大切です。
 治療は保存的治療に薬物療法(飲み薬、湿布、注射)、物理療法(温熱、低周波、超音波)、運動療法(肩関節の周りの筋肉を鍛えます)があり、手術療法(切れた筋肉の再建)に腱板修復術があります。多くの場合は保存的治療で対応可能ですが、強い痛みが長引く場合には手術治療も良い方法です。以前は大きく切って手術していたので大変でしたが、現在は内視鏡を使った手術が中心ですので従来の手法と比較して傷も小さく、回復も早くなっています。
 高齢者では頚椎が原因で似たような症状が出る場合もありますし、悪性腫瘍の転移などもあります。このため安易な自己判断は要注意です。肩関節の痛みが気になる場合には一度整形外科医に相談なさると良いと思います。