健康一口メモ1月号『子供の視機能障害』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

 人の視機能は3歳頃までに急速に発達して6〜8歳頃に完成し、生涯の視力が決まります。
 生まれたばかりの時の視力は光覚弁(光がわかる程度)、生後3か月頃で0.05、1歳で0.2、2歳で0.4、6歳までに1.0程度に到達します。通常の視力検査では、正常に発達している子どもであっても3歳0か月では約半数しか1.0の視力に達せず、5歳でようやく8割の子どもが1.0の視力に達するとされています。そこで3歳児健診では0.5以上を正常範囲とされています。
 外の世界の情報は外からの光として眼球の中の網膜で感じて視神経から脳の中を通って後頭葉という脳の後ろの部分で視覚情報として受けとることができます。
この場でご紹介するのは子どもの視機能障害として多い「屈折異常弱視」です。
屈折異常弱視とは主に遠視や乱視が原因で網膜にピントが合わず、後頭葉がピントが合った視覚情報を得られないために視機能の発達が妨げられてしまうことによって起こります。8歳までに発見できず治療を受けられずにいると一生1.0の視力を得ることができないため早期発見が重要視されています。一般的には3歳児健診の視力検査や屈折検査で発見されることが多く、それを逃すと就学時健診や小学校での視力検査を受けるまで見つけることができません。3歳児健診での検査は、従来は家庭での視力検査のみで判定され屈折異常弱視が見逃されることが問題ではありましたが、近年は「フォトスクリーナー」という器械を使用することにより、他覚的に検査出来るようになり屈折異常の見逃しが減り早期発見に大変役に立っています。国からの補助金も下りることになり「フォトスクリーナー」を導入する自治体が増えています。
 治療として眼鏡をかけることとなりますが、眼科を受診して検査を受けることで本人に合った眼鏡を作ることが出来ます。視力の改善に左右差がある場合は見える眼をアイパッチなどで隠して、見えない眼で見させる「健眼遮閉」という治療が必要になる場合もあります。

健康一口メモ12月号『爪白癬(つめはくせん)について』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

爪を見たときに白く濁っていたり厚く脆(もろ)く変形してきているようなら爪(つめ)白癬(はくせん)の可能性が高いでしょう。
カビ(真菌)の一種、白癬菌感染による疾患で、爪(つめ)病変部(びょうへんぶ)の組織を鏡検もしくは培養し確定診断されます。日常的に爪が蒸れた環境下におかれていたり、靴による圧迫等で慢性的に外傷を受けている状態が発症の契機につながります。足(あし)白癬(はくせん)から続発するケースも多く、一度感染すれば難治であるためできるだけ早期に治しきることが肝要です。
治療としては数年前に従来の薬剤より効果の高い内服薬がでました。他薬剤との併用も問題なく、副作用も少なくなっている印象があります。ただ感染から長期間経過し重症化してしまうと完治しづらくなってしまいます。
類似の症状を呈する疾患に爪カンジダ症があり正しく診断されないとカビの薬には白癬菌しか効かないものもあるので注意が必要です。また誤診されやすい疾患として感染とは別の原因で生じる、爪甲鉤弯症(そうこうこうわんしょう)、乾癬(かんせん)、苔癬(たいせん)といったものが挙げられます。
ほぼ自覚症の無い爪(つめ)白癬(はくせん)は、重度になるまで放置されやすい病気ですが、爪を見ておかしいと感じたら、手遅れになる前にすぐ専門医へかかることをお勧めします。

年末年始診療状況

健康一口メモ11月号『甲状腺の異常について』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

甲状腺は首の前面・喉仏(のどほとけ)の下にある蝶のような形をした臓器で、体の新陳代謝を促進している重要な二種類の甲状腺ホルモン(T4とT3)を分泌しています。甲状腺の病気にはそのホルモンの分泌(ぶんぴつ)異常(いじょう)と腫瘍性(しゅようせい)疾患(しっかん)があります。ホルモンの産生が多くなることを甲状(こうじょう)腺(せん)機能(きのう)亢進症(こうしんしょう)といい、その代表がバセドウ病です。逆にホルモン分泌が少なくなることを甲状(こうじょう)腺(せん)機能(きのう)低下症(ていかしょう)といい、その代表が橋本病(はしもとびょう)です。バセドウ病では甲状腺は大きくなり(甲状腺腫(こうじょうせんしゅ))、目が内側から押し出されるように見える(眼球(がんきゅう)突出(とっしゅつ))、脈が速くなる(頻脈(ひんみゃく))が特徴ですが、新陳代謝の亢進により体重減少、発汗、手の震え、不整脈などもみられます。自律神経失調症や更年期障害と間違えられることがあります。橋本病で機能低下症になりますと甲状腺が大きくなり、全身の代謝が低下することにより無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じます。うつ病や認知症と間違われることもあります。いずれも自己(じこ)免疫(めんえき)疾患(しっかん)で女性に多いのが特徴ですが、原因は不明です。正確に診断するために甲状腺ホルモンと脳下垂体(のうかすいたい)から分泌される甲状(こうじょう)腺(せん)刺激(しげき)ホルモン(TSH)を測定する必要があります。バセドウ病と橋本病の診断には甲状(こうじょう)腺(せん)自己(じこ)抗体(こうたい)を測定します。いずれも血液検査で分かりますのでかかりつけ医にご相談してください。甲状腺の腫瘍性疾患については血液検査では分かりませんので画像検査、特に超音波検査をする必要があります。甲状腺ホルモンの主原料は海藻類に含まれるヨウ素(ヨード)です。必要なヨウ素は取らなければなりませんが、ヨウ素の多い昆布を毎日食べ過ぎたり、ヨウ素含有のうがい薬を多用すると、甲状腺ホルモンが作られなくなり甲状腺機能低下症となることがありますので注意が必要です。
甲状腺は触れないのが正常ですので触れれば大きいのでかかりつけ医にご相談して下さい。

健康一口メモ9月号『子どものスキンケア』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

今回は子どものスキンケア、特に3歳くらいまでのスキンケアについて、お話しします。みずみずしく見える0〜2歳児の肌ですが、実は大人よりも表面側の表皮がずっと薄いので、乾燥しやすいのです。また、皮脂(皮膚を保湿するためにかく成分)の出る量も少なく、このため皮膚のバリア機能も弱く、汚れや汗、強い日差し(紫外線)などの刺激ですぐに荒れたり、かぶれたりします。冬場や季節の変わり目は乾燥しやすいので、保湿クリームなどをこまめに塗って、水分や脂分を補いましょう。小さな円を描くように塗るとムラなく塗りやすくなります。湿度が50%以下になると、皮膚の乾燥が始まると言われており、実は一年の多くの時期で肌は乾燥しやすいのです。加湿器を使用したり、洗濯物の室内干しなどで室内の湿度調節を行ってください。子どもは代謝が良く、汗をかきやすいため、いわゆる汗疹(あせも)が出来やすいので衣類は通気性の良い物を選びましょう。体の清潔のため入浴は必要ですが、強い石けんやボディソープで洗い過ぎると、かえって肌を乾燥させてしまいます。刺激の弱めの物(子ども用と書いてあります)を、少量でよく泡立ててから使用しましょう。特に荒れている時は、タオルを使わず手で優しく洗う程度で十分です。湿疹は軽い状態から対処した方が早く良くなるので、悪くなってからではなく、早めに対処したり、相談したりしてください。

健康一口メモ8月号『耳掃除について』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

 皆さんは普段耳掃除をしていますか?耳掃除を全くやらない方から毎日お風呂上がりに綿棒でされる方までいらっしゃると思います。一体どれくらいの頻度で、どのような方法で行うのが良いのでしょうか?
 もともと耳垢は耳の中の皮膚の代謝物や分泌物が固まったもので、生じてしまう事は避ける事ができません。本来耳には耳垢を自然に外に排出する機構が備わっているので、基本的には耳掃除をしなくても問題はありません。ただ、耳の形状によっては自然に出てくる事が難しい場合もあり、そのようなケースでは耳掃除の必要があります。
 耳掃除の方法ですが、これはご自身ではやらず、耳鼻科へ受診される事をおすすめします。
 ご自身で耳掃除を行うと、見えない中を手探りで操作するため、耳の中の皮膚を傷つけてしまい外耳炎となってしまうリスクがあります。また耳垢を奥に押し込んでしまい余計取れにくくなってしまったり、完全に耳を塞いでしまったりする可能性もあります。耳鼻科では耳の中を直接観察しながら専用のピンセットや吸引器具を用いて耳掃除を行います。簡単に取る事が出来ない時には、耳の中に耳垢を柔らかくする薬を入れて時間を置いてから耳掃除を行います。
 小さいお子さんの耳掃除についても、急に動いてしまい、鼓膜を破ってしまうような危険もありますので、病院で安全に行う事をおすすめします。
 耳掃除の頻度ですが、一般的には3~4か月ごと、年に3~4回程度をおすすめしています。異常が出てからの耳掃除では、処置時の痛みが増える事も多いので、自覚症状が出る前に早めに受診していただく事をおすすめします。
症状がないのに耳掃除だけで受診しても良いのか心配される方もいらっしゃいますが、全く問題ありませんのでご安心下さい。逆に耳垢のせいだと思っていても実際は難聴のような病気のケースもありますので、気になる症状がありましたら遠慮なく耳鼻科にご相談いただければと思います。

健康一口メモ7月号『風疹ワクチン』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

昭和37年度~昭和53年度生まれの男性の皆様へ
「生まれてくる赤ちゃんを守る風しん対策」

 この世代の男性には、保健センターから風しんの抗体検査と予防接種のクーポン券が届いています。 この年代では、女性のみに公的風しん予防接種が行われていました。
 対象男性の皆様がこれから抗体検査を受け、必要な予防接種を受けることで日本の風しんの流行を抑えることが期待できます。
 風疹は一般的に「三日はしか」と呼ばれ、はしかより軽症です。症状は微熱と発疹などです。成人の場合は高熱の場合もあります。
 ただし、妊娠初期の妊婦さんが風疹に感染すると、高い確率で子宮内の赤ちゃんに影響が及びます。流産や死産、または生まれてくる赤ちゃんにも影響が出てしまう可能性があります。心臓や脳などの発生成熟過程にある胎児に風疹ウイルスが感染すると、心臓病、白内障、高度難聴などの合併報告があります。筆者は小児科医として風疹ウイルスに感染した新生児を数例受け持ちましたが、ちょっとした振動に驚き、大声で泣いていたことを思い出します。これは聴力障害のためと判断しましたが、対応は優しく抱きしめてあげる事しかありませんでした。その後、複数回の手術をうけています。
 ご本人と、これから生まれてくる子どもさんやお孫さんを守るために、ぜひクーポン券を使って風しん抗体検査と予防接種をお受けください。

健康一口メモ6月号『高齢者の肩の痛み』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

 肩の痛みというといわゆる「肩こり(首こり)」を想像される方もいると思いますが、ここでは肩関節(腕の付け根)が原因の痛みについてお話しします。肩関節が原因の痛みでは50代を中心に起こる五十肩(肩関節周囲炎)が有名ですが、これは肩関節周囲の靭帯が固くなり関節が動かなくなる病気です。しかし、高齢になると骨と骨とをつないで関節を安定させている腱板(けんばん)という筋肉が長年の使用によって擦り切れる「腱板断裂」が問題となります。
 主な症状は腕を動かしたときの痛みが出ることです。特に腕を外側に90度前後あげて上下に動かした時に出る痛みが特徴です。それ以外にも安静時の腕の痛みや、夜寝ている時の痛み、腕が上手くあげられないといった症状もあります。筋肉の一部が切れているわけですから強い痛みを想像しますが、不思議なことに実際にはほとんど症状がでていない方もいます。また、痛みの割に関節の動きがそれほど障害されていないこともあります。
 診断はレントゲンで骨の変形の有無を評価し、超音波やMRIで筋肉の状態を評価します。また、実際に肩関節を動かした時に出る痛みの状態を確認することも大切です。
 治療は保存的治療に薬物療法(飲み薬、湿布、注射)、物理療法(温熱、低周波、超音波)、運動療法(肩関節の周りの筋肉を鍛えます)があり、手術療法(切れた筋肉の再建)に腱板修復術があります。多くの場合は保存的治療で対応可能ですが、強い痛みが長引く場合には手術治療も良い方法です。以前は大きく切って手術していたので大変でしたが、現在は内視鏡を使った手術が中心ですので従来の手法と比較して傷も小さく、回復も早くなっています。
 高齢者では頚椎が原因で似たような症状が出る場合もありますし、悪性腫瘍の転移などもあります。このため安易な自己判断は要注意です。肩関節の痛みが気になる場合には一度整形外科医に相談なさると良いと思います。

健康一口メモ4月号『ストレスと胃腸の症状』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

 ストレスや疲れ、プレッシャーを感じたときにお腹をこわしたり、胃が痛くなったりすることはありますか。また、お腹の症状があるので上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や大腸内視鏡検査を受けたのに結果は正常と説明された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 検査が正常でも胃腸の症状が続く患者さんは、胃の症状の場合は「機能性ディスペプシア」、腸の症状の場合は「過敏性腸症候群」と診断されます。なぜ検査で異常がないのに症状が出るのでしょうか?

 胃や腸は食べ物を消化するだけの単純な袋ではありません。胃腸には非常に多くの神経細胞が含まれています。胃腸はこの神経細胞と平滑筋(へいかつきん)という胃腸の壁の中の細かい筋肉の線維(せんい)が微妙なバランスをとりながら動いています。体や心の不調によって胃腸につらい症状が出るのはこのバランスがくずれるからだと言われています。

 さらに胃の症状の場合は胃酸(いさん)過多(かた)も関わってきます。ストレスを感じると、それが体の痛みや寝不足などの身体的なものであっても、精神的・感情的なものであっても、胃液の中に胃酸が多くなります。胃酸が多くなると、胃の運動が正常でなくなったり、消化が悪くなったりして、様々な胃の症状を起こします。

 不安もストレスの原因となります。お腹の症状が続くうちに「自分はがんではないか」「一生このまま治らないのではないか」などの不安を感じると胃や腸の症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります。このような場合は検査や診察を受けて不安を和らげると症状が軽くなることもあります。

 胃腸の症状を感じたときはまず、「腹八分、薄味、あっさり、よくかんで」です。またカフェイン(緑茶・紅茶・烏龍茶・コーヒーなど)や脂っこい食べ物、アルコール、タバコも控えめにしましょう。それでも症状が治まらないときや、体重が減る、血便や黒い便が出るときには医療機関を受診しましょう。

健康一口メモ3月号『スマホによる目の影響・スマホ老眼』を掲載いたしました

過去の情報はこちらからご覧いただけます。

老眼とは?
私たちが物を見る時は、目の中にある毛(もう)様体筋(ようたいきん)という筋肉が働き、水晶体(すいしょうたい)というレンズを厚くしたり薄くしてピント合わせをしています。
一般的な老眼は、毛様体筋の衰え、水晶体が硬くなることで近くを見る時にピント合わせがしづらくなる40代前後から生じる老化現象です。

スマホ老眼とは?
最近は、若年の方にも老眼に似た症状がみられるようになりました。
至近距離でスマートフォンの小さい画面を見続けることにより、目を酷使(こくし)し毛様体筋が凝り固まり、ピント合わせがうまくできなくなった状態です。

スマホ利用時間の増加
総務省の報告では、スマホを含むモバイル機器によるインターネットの利用時間は、10代の場合、2012年には平均76分、2018年には約145分とほぼ2倍になっています。
使用時間の増加率が著しいのが50代で、2012年は約18分、2018年には約53分と3倍近くなっています。そのほかの年代も利用時間は上昇しています。
また2020年以降もコロナ禍による巣ごもりで利用時間はさらに伸びています。

症状は?
近くを見る時にかすむ、目の疲れ、ドライアイ、頭痛や肩こり、集中力の低下など

改善策、治療
①スマホの使用時間を減らす。
②スマホ(パソコンも)の使用中に定期的に休憩する。1時間続けたら10~15分位の休憩をし、遠くを眺める。
③疲れを感じたら目を温め、血行をよくしリラックスする。
④眼精疲労改善の点眼薬を使用する。また、画面をじっと見ていると瞬きの回数が減り、ドライアイにもなるため、ドライアイ改善の点眼薬を使用する。