健康一口メモ3月号『プール熱について』を掲載いたしました

プール熱について

 プール熱は咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)の俗称です。急な発熱、のどの痛み、目の充血、目やになどの症状があります。プールでの接触やタオル使い回しなどで感染します。感染力が非常に強いのでインフルエンザなどと同様に出席停止となる感染症です。
 現在ではプールの塩素濃度の管理 、タオルの使い回し禁止、平成生まれの人は知らないでしょうが、水泳前に目を洗うためのU字型の上向き蛇口の撤去などでプールでの感染は少なくなったようです。六月から八月に流行していましたが、現在は一年中流行しているとの調査結果が出ています。
 プール熱はアデノウイルスが引き起こす風邪の一つです。アデノウイルスには五十種類以上のタイプがあります。そのため一度かかっても複数回の感染を繰り返します。感染好発部位は、のど、目、腸、肺といわれており、部位によって「のどが痛い」「目やに」「下痢」「咳」など多彩な症状を引き起こします。プール熱以外では、目の症状単独であれば流行性角結膜炎(りゅうこうせいかくけつまくえん)、消化器症状であれば胃腸炎などと診断されます。
 アデノウイルス感染症は大人にもみられます。大人の場合は法律上の勤務停止はありませんが、職場に感染を持ち込む可能性が大きいので自主的な休業が必要となります。一般的には子供の感染症に大人がかかるとより重症になります。
 日本ではあまり分離されていませんが、アメリカではアデノウイルス7型14型が重症呼吸器感染症を引き起こすとの報告があります。大人の感染例もあり、コロナ、インフルエンザと並んで慎重な対応が必要とされています。
 自分は健康と思っている方も、日頃からの健康管理や感染からの防衛行動を心がけて下さい。 

健康一口メモ2月号『妊婦歯科健診』を掲載いたしました

妊婦歯科健診
 【妊婦歯科健診の実態、重要性】‬
‭ 各市町村の努力で行われている妊婦歯科健診ですが、現状受診率がかなり低くなっています。‬妊娠中は、女性ホルモンの急激な増加による口腔環境の変化や、「つわり」による食べ物の好みの変化、‬歯磨きの困難などによって、むし歯や歯周病になりやすくなっています。‬‬‬‬
 しかし、妊婦さんは身体のほうが大変で、口腔内の健康まで目を向けることは難しく、初期症‬状に気づきにくいことも多いです。‬妊娠中の歯周病は、早産や低体重出産のリスクを高めることがわかっているため、妊‬婦健診を受け早期発見することが必要です。‬受診する時期については、「つわり」がおさまる妊娠4〜5ヶ月頃の比較的体調の安定した妊娠‬中期に必要な歯科治療を行うことをおすすめします。‬
 【歯科医院でお伝えできる大切な事】‬
‭ 歯科医院ではママの口腔ケアだけではなく、生まれてくる赤ちゃんのためになる情報も多くお伝えすることができます。‬例えば、どうやったらむし歯のない子に育てられるのか?‬他には、最近問題となっている口腔機能発達不全症という病態についてです。‬
 食べ物を上手にかんだり飲み込む事ができない。お話しする時にうまく発音できない、お口が常に開いているなどの症状があります。‬‬‬
‭ ママの口腔ケアをしながら、生まれてくる赤ちゃんのための正しい知識を身に付ける‬ためにも妊婦健診の受診をおすすめします。お口のことでお悩み事、不明点がありましたら‬なんでもご相談ください。‬‬‬
(北足立歯科医師会)

健康一口メモ1月号『低温熱傷(低温やけど)とは?』を掲載いたしました

低温熱傷(低温やけど)とは?

Ⅰ.“やけど”は どんなケガ?
 やけどは医学用語(いがくようご)で熱傷(ねっしょう)といい、ヒフや粘膜(ねんまく)が主に熱(ねつ)で傷害(しょうがい)されたケガです。やけどの重症度(じゅうしょうど)は温度と接触(せっしょく)時間(じかん)によって決まります。高い温度、長時間(ちょうじかん)の接触ほど、深く重症(じゅうしょう)になります。熱が高温なら短時間の接触でやけどになりますが、短時間の接触では問題にならない44℃~50℃程度でも長時間 接触しているとやけどになり、これを低温熱傷(ていおんねっしょう)といいます。

Ⅱ.“低温熱傷(ていおんねっしょう)”の原因は?
低温熱傷の原因は、湯たんぽや電気あんか、電気毛布、使い捨てカイロなどによるものが多い印象です。下腿(かたい)(膝から下)や足に多くみられ、寝ている時や体が動かせない時にケガをすることが多いです。

Ⅲ.“低温熱傷(ていおんねっしょう)”の症状(しょうじょう)は?
 やけどは浅い方から深い方へ、Ⅰ度(赤くなりヒリヒリする)、Ⅱ度(水ぶくれやただれ・出血(しゅっけつ)があり、痛い)、Ⅲ度(白っぽく、硬(かた)く、痛みがない)と重症度(じゅうしょうど)が分けられます。気がつかずに長時間熱に接してしまうため、低温熱傷は深いやけど、Ⅲ度となりやすいです。痛みを感じる神経(しんけい)が熱で傷害(しょうがい)されると、深いのに痛みがなくなります。痛くないからと、軽く考えないようにしましょう。

Ⅲ.“低温熱傷”になったら?
なるべく早く医療(いりょう)機関(きかん)で診察(しんさつ)を受けることをおすすめします。重症ではなくても、正しく管理できないとキズが化膿(かのう)することがあります。診察までは、石けんやボディソープの泡(あわ)できれいに洗い、水道の流水で十分にすすぎ、清潔(せいけつ)なガーゼなどで保護(ほご)しましょう。小さな低温熱傷でも、何ヶ月も治らないことや、手術になることも珍(めずら)しくありません。こじらせる前に皮膚科や形成外科の専門医を受診(じゅしん)しましょう。

Ⅳ.“低温熱傷”を防(ふせ)ぐには?
同じ体の部位を、暖房(だんぼう)器具(きぐ)に長時間触れないようにしましょう。寝る前に湯たんぽは布団から出す、電気製品は電源(でんげん)を切るなどしましょう。

健康一口メモ12月号「健康診断と健診結果の見方(肝臓)」を掲載いたしました

「健康診断と健診結果の見方(肝臓)」

 健診の中の血液検査の項目に、GOT(AST)、GPT(ALT)、γGTPというものがあるのをご存知ですか。肝臓の調子を表す代表的なもので、昔はGOT、GPTでしたが、今はAST、ALTを用いることが多いです。
AST(アスパラギン酸トランスアミナーゼ):心臓、肝臓、骨格筋、腎臓に大量に存在するミトコンドリア酵素で、これらが壊れると血液の中に出てくる。
ALT(アラニントランスアミナーゼ):細胞の中にある酵素で大部分が肝臓の中にあり、壊れると血液の中に出てくる。
γGTP:γグルタミルトランスペプチターゼ:肝臓で作られる消化液である胆汁の流れが悪い時にあがることが多い。
 健診ではAST、ALTの正常値は30までに統一されています。30を超えると何か病気があるかもしれないから、病院に行きましょう、ということです。お酒の飲みすぎ、太り過ぎによる脂肪肝、薬によるもの、心臓の病気、ウィルスによるもの、その他いろいろな原因で上昇します。肝臓の病気に関する血液検査はこれらだけではないので、追加の血液検査をしたり、腹部エコー(超音波検査)などの画像診断をしたりすると良いと思います。
 AST、ALTの値がすごく高い場合は、確かに大変な病気のことが多いです。しかし、少ししか高くないから大丈夫というわけではありません。重症の病気が隠れていることがあります。特に少しだけ高いのが、何年も続いている人は要注意です。アルコールや肥満、糖尿病などの病気に伴う脂肪肝はいろいろな治療で治ります。しかし、長い間ほっておくと肝硬変になり、そうなると元には戻りません。
 AST,ALTが高い場合、もう一つ忘れていけないのは肝炎のことです。C型肝炎は現在ほぼ100%治りますし、B型肝炎は早く治療すれば悪くならないで済みます。全国調査の試算から考えると、皆さんのお住まいの地域では約1000人が、ウィルスを持っているのに検査を受けず気づいていないことになります。まだ検査を受けたことがない方はぜひ受けて下さい。

健康一口メモ11月号『ドライアイの最近の話題』を掲載いたしました

『ドライアイの最近の話題』

【ドライアイについて】
「涙」は目の乾燥を守ったり、酸素や栄養を与えたり、表面の汚れを洗い流したり、視力を安定させるなどの大事な働きがあります。涙の量が不足し、涙の質のバランスが崩れることにより涙が目の表面にまんべんなく行きわたらなくなると様々な症状を引き起こします。これが「ドライアイ」です。目が乾く、目がかすむ、目が疲れる、目がゴロゴロするなどの症状をおこし、生活の質を悪くする慢性の病気です。原因は加齢、スマートフォンやパソコン、エアコン、コンタクトレンズの使用などがありますが、これらによって涙が蒸発しやすくなり、目の表面に傷を生じることもあります。
ドライアイの患者さんは増えており身近な病気となっていますが、最近は別の原因が話題となっています。

【マイボーム腺機能不全】
まぶたの裏側に油を分泌しているマイボーム腺という場所があります。さらにまつ毛の生え際より少し内側に小さい点が並んでいます。そこが油の出口で適度に油が分泌される仕組みです。この油が非常に大事で、涙の表面に油膜をはり水分の蒸発を防ぐ役割があります。人間は瞬きをするたびに涙や油がでるようになっていますが、両方のバランスが崩れるとドライアイが生じます。この油の分泌が悪くなっている状態を「マイボーム腺機能不全」といいます。

【日常生活での予防】
マイボーム腺機能不全は加齢にともない生じやすくなりますが、脂質の多い食事、コンタクトレンズ使用の方、アイメイクをする方に起こりやすいといわれています。ご自身での改善法はまぶたのまわりを清潔にし、まぶたを蒸しタオルや市販の温熱効果のあるアイマスクなどで温めると油の分泌が改善し、涙が蒸発しづらくなります。

 ドライアイの治療のため点眼治療を行うことも大事ですが、このマイボーム腺のお手入れをしてドライアイ対策を日頃から取り入れてみて下さい。

年末年始診療状況(R6年度)

健康一口メモ9月号『運動不足と胃腸障害』を掲載いたしました

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「運動を始めたら胃腸の調子が良くなった」という経験のある方は多いのではないでしょうか?運動不足と胃腸の不調の関係について専門家による診療ガイドラインを参考にまとめてみました。

1.内視鏡検査が正常なのに胃の症状が治らない〜機能性ディスペプシア(FD)〜

内視鏡検査で異常がないのに胃の不調が続くのが機能性ディスペプシア(FD)です。胃の知覚過敏や運動異常が原因とされています。FDは運動不足と関連しています。難治性のFDの患者さんはそうでない患者さんよりもさらに運動不足の傾向があります。運動をすればFDがよくなるという明確な根拠はまだありませんが、FDには不規則な睡眠やストレスも関わっており、それらは運動で改善することもわかっているため、運動の効果は期待できそうです。

1.内視鏡検査では正常なのに腸の症状が治らない〜過敏性腸症候群(IBS)〜

同じく検査は正常なのに腹痛や腹部膨満感を伴う便秘・下痢など腸の症状が続くのが過敏性腸症候群(IBS)です。IBSに運動療法は有用であり、適度なヨガ、ウォーキング、エアロビクスなどの運動は治療効果があります。

1.慢性便秘症〜排便困難感、残便感〜

体を動かすことの少ない人ほど便秘になりやすい傾向があります。また、野菜・豆類・きのこ類などの食物繊維は便秘の治療に有効ですが、身体活動性の低い人はその効果が低いとも言われています。

1.逆流性食道炎、胃食道逆流症〜しつこい胸やけ〜

週1回以上の適度な運動(30分以上のジョギングなど)で胃食道逆流症の発症リスクは下がります。一方、筋力トレーニングなどの激しい運動では胃酸の逆流が増えることも報告されています。胸やけなどの症状が気になるときは軽い運動を中心にした方がよさそうです。運動は大腸がんをはじめとしたがんの予防にもなります。「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと」という厚労省の提言を参考に運動を心がけましょう。

健康一口メモ8月号『膝(ひざ)関節半月板損傷』を掲載いたしました

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病態
 膝(ひざ)関節は大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨、膝蓋(しつがい)骨という骨でできています。この大腿骨と脛骨のあいだにある三日月型をした軟骨の板が半月板です。内側と外側にあり、大腿骨から脛骨へかかる体重をやわらげるクッションの役目をしています。膝関節に体重がかかった状態で膝関節にねじれが加わると半月板が損傷することがあります。スポーツやけがによって損傷が生じる場合と、加齢に伴い半月板が弱くなり日常生活動作などで損傷する場合もあります。10歳以下の小児の半月板損傷は、通常よりも大きくて厚い半月板(円板状半月板)の損傷によるものがあります。
症状
 損傷した半月板の部分に痛みと腫れがあり、膝が動きにくくなります。痛みは階段の上り下りやしゃがみ込みによって生じることがよくあります。膝に水がたまったり、急に膝が曲がらないあるいは伸びないようになる(ロッキング)こともあります。
診断
 半月板損傷を疑った場合、画像の検査をします。レントゲン写真では骨の変化を見ます。半月板はレントゲン写真では写らないのでMRI検査を行います。
治療
 症状が軽い場合、保存療法を行います。損傷してすぐの場合は、安静や挙上、アイシングなどを行います。装具やギプスによる固定、松葉杖によってあまり体重をかけないようにすることもあります。痛みに応じて消炎鎮痛薬のはり薬、飲み薬を使用します。症状が軽快してくれば、筋力訓練や可動域訓練(動かす練習)を行います。
 症状が重い場合、動きが極端に制限されている場合、保存療法でも症状が軽快しない場合、手術を行います。手術は全身麻酔あるいは腰から下半身の局所麻酔を行い、関節鏡というカメラを膝関節に入れて半月板を観察します。半月板が断裂している場合は、断裂した部分を切り取る切除術か、断裂した部分を縫い合わせる縫合術を行います。術後のリハビリテーションの期間は手術法によってことなります。

健康一口メモ7月号『ダニ刺傷について』を掲載いたしました

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 毎年、5月連休が終わると、虫さされ(刺虫症)の患者さんが現れ始めますが、今年は、4月より早くも、何かの虫に刺されて、痒みを訴えてみえる患者さんが多くみられる様な気がします。イエダニやトリサシダニなどによる被害も、刺されている場面をまず見ることが出来ません。ネズミやスズメなどの巣から出てきて、人が寝ている間に衣類のすき間に入り込むようで、体幹や四肢に「紅色(こうしょく)丘疹(きゅうしん)」が認められることが多いです。刺された(触れた)直後から1時間以内に痒みが出現し、搔(か)きまくって、市販薬をつけた後、医院(皮膚科)を受診される事になると思います。虫と言えば夏と思われがちですが、そうとは限りません。現在、日本では、高齢者だけでなく、若者もベッドを使用する事が多いと思われますが、皆さん、掃除をしていますか?マットレスの下に、ダニ予防パットを敷いたり、寝具類を日光に当てる事が必要だと思われます。刺された後の皮膚反応自体に個人差があることや、同じ部屋で生活していても刺されない人もいることから、家庭内に同じ症状の人がいなくても、刺虫症を否定する根拠にはなりません。ペットからの感染やベッド上に置くたくさんのぬいぐるみ(マスコット)などの管理に気をつけて頂きたいと思います。治療は、症状(主に痒み)に個人差がありますが、抗ヒスタミン剤やステロイド剤の外用薬、抗アレルギー剤の内服が使われます。マダニ刺症では、患者の体に虫がついて来院されるものですが、ツツガムシ病、日本紅斑(こうはん)熱(ねつ)なども知られていて、田畑や庭木や草花に触れる機会が多い方々には、たかが虫さされといっても油断できません。痒みの軽いうちに、治療を開始し、「痒疹(ようしん)」にならない様に、皮膚科を受診される事をおすすめします。

健康一口メモ6月号『本当は怖い骨粗鬆症の話』を掲載いたしました

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 「骨粗鬆症」と聞くと皆さんはどのような印象を持ちますか?「お年寄りの病気」、「女性がなる病気」、「背が低くなる」など、人によってイメージはまちまちだと思いますが、「生命予後に関わる重大な病気」と考える方はあまりいないのではないでしょうか?もちろん骨粗鬆症で直接亡くなることはまずありませんが、それによって起こる状態によっては「生活の質」、「生命予後」が大きく変化してしまうのです。
 骨粗鬆症が大きく関係する骨折が4つあります。症状としては1)腰曲がり、身長低下2)股関節の骨折、3)肩の骨折、4)手首の骨折です。それぞれ転倒で起こることが多いのですが、1)は重いものを持って起こることもあれば、いつの間にか進行していることもあります。これらの問題点は、それぞれが生活の質を大きく落としてしまう可能性があることです。背骨が曲ると前屈みになり転倒しやすくなりますし、また逆流性食道炎という胃腸の病気にもなりやすくなります。股関節の骨折では歩行能力が落ちてしまい、活動範囲が狭くなりますし、肩の骨折では衣類の脱ぎ着やトイレ動作にも支障が出てしまいます。また、手首の骨折は握力の低下を起こしてしまいます。それぞれ、短期的には命に関わらないと思うかもしれませんが、生活の質が落ちることは結果として寿命を縮めてしまうことに繋がります。
 現在はたくさんの薬が開発され、以前では望めなかった成果が出るようになっています。でも、本当は薬で骨粗鬆症を治すのではなく、骨粗鬆症を未然に防ぎ、ひどい骨粗鬆症を起こさないことが大切です。日本人の寿命が伸びている中、骨粗鬆症を完全に無くすことはできませんが、骨粗鬆症への進行を遅らせることにより、健康で楽しい人生を送る一助になることは間違いありません。高齢者だけでなく、比較的若い女性や男性でも起こっていることがありますので、ご自身の骨密度に関心を持っていただくと良いと思います。