健康一口メモ9月号『運動不足と胃腸障害』を掲載いたしました

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「運動を始めたら胃腸の調子が良くなった」という経験のある方は多いのではないでしょうか?運動不足と胃腸の不調の関係について専門家による診療ガイドラインを参考にまとめてみました。

1.内視鏡検査が正常なのに胃の症状が治らない〜機能性ディスペプシア(FD)〜

内視鏡検査で異常がないのに胃の不調が続くのが機能性ディスペプシア(FD)です。胃の知覚過敏や運動異常が原因とされています。FDは運動不足と関連しています。難治性のFDの患者さんはそうでない患者さんよりもさらに運動不足の傾向があります。運動をすればFDがよくなるという明確な根拠はまだありませんが、FDには不規則な睡眠やストレスも関わっており、それらは運動で改善することもわかっているため、運動の効果は期待できそうです。

1.内視鏡検査では正常なのに腸の症状が治らない〜過敏性腸症候群(IBS)〜

同じく検査は正常なのに腹痛や腹部膨満感を伴う便秘・下痢など腸の症状が続くのが過敏性腸症候群(IBS)です。IBSに運動療法は有用であり、適度なヨガ、ウォーキング、エアロビクスなどの運動は治療効果があります。

1.慢性便秘症〜排便困難感、残便感〜

体を動かすことの少ない人ほど便秘になりやすい傾向があります。また、野菜・豆類・きのこ類などの食物繊維は便秘の治療に有効ですが、身体活動性の低い人はその効果が低いとも言われています。

1.逆流性食道炎、胃食道逆流症〜しつこい胸やけ〜

週1回以上の適度な運動(30分以上のジョギングなど)で胃食道逆流症の発症リスクは下がります。一方、筋力トレーニングなどの激しい運動では胃酸の逆流が増えることも報告されています。胸やけなどの症状が気になるときは軽い運動を中心にした方がよさそうです。運動は大腸がんをはじめとしたがんの予防にもなります。「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分行うこと」という厚労省の提言を参考に運動を心がけましょう。

健康一口メモ8月号『膝(ひざ)関節半月板損傷』を掲載いたしました

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病態
 膝(ひざ)関節は大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨、膝蓋(しつがい)骨という骨でできています。この大腿骨と脛骨のあいだにある三日月型をした軟骨の板が半月板です。内側と外側にあり、大腿骨から脛骨へかかる体重をやわらげるクッションの役目をしています。膝関節に体重がかかった状態で膝関節にねじれが加わると半月板が損傷することがあります。スポーツやけがによって損傷が生じる場合と、加齢に伴い半月板が弱くなり日常生活動作などで損傷する場合もあります。10歳以下の小児の半月板損傷は、通常よりも大きくて厚い半月板(円板状半月板)の損傷によるものがあります。
症状
 損傷した半月板の部分に痛みと腫れがあり、膝が動きにくくなります。痛みは階段の上り下りやしゃがみ込みによって生じることがよくあります。膝に水がたまったり、急に膝が曲がらないあるいは伸びないようになる(ロッキング)こともあります。
診断
 半月板損傷を疑った場合、画像の検査をします。レントゲン写真では骨の変化を見ます。半月板はレントゲン写真では写らないのでMRI検査を行います。
治療
 症状が軽い場合、保存療法を行います。損傷してすぐの場合は、安静や挙上、アイシングなどを行います。装具やギプスによる固定、松葉杖によってあまり体重をかけないようにすることもあります。痛みに応じて消炎鎮痛薬のはり薬、飲み薬を使用します。症状が軽快してくれば、筋力訓練や可動域訓練(動かす練習)を行います。
 症状が重い場合、動きが極端に制限されている場合、保存療法でも症状が軽快しない場合、手術を行います。手術は全身麻酔あるいは腰から下半身の局所麻酔を行い、関節鏡というカメラを膝関節に入れて半月板を観察します。半月板が断裂している場合は、断裂した部分を切り取る切除術か、断裂した部分を縫い合わせる縫合術を行います。術後のリハビリテーションの期間は手術法によってことなります。

健康一口メモ7月号『ダニ刺傷について』を掲載いたしました

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 毎年、5月連休が終わると、虫さされ(刺虫症)の患者さんが現れ始めますが、今年は、4月より早くも、何かの虫に刺されて、痒みを訴えてみえる患者さんが多くみられる様な気がします。イエダニやトリサシダニなどによる被害も、刺されている場面をまず見ることが出来ません。ネズミやスズメなどの巣から出てきて、人が寝ている間に衣類のすき間に入り込むようで、体幹や四肢に「紅色(こうしょく)丘疹(きゅうしん)」が認められることが多いです。刺された(触れた)直後から1時間以内に痒みが出現し、搔(か)きまくって、市販薬をつけた後、医院(皮膚科)を受診される事になると思います。虫と言えば夏と思われがちですが、そうとは限りません。現在、日本では、高齢者だけでなく、若者もベッドを使用する事が多いと思われますが、皆さん、掃除をしていますか?マットレスの下に、ダニ予防パットを敷いたり、寝具類を日光に当てる事が必要だと思われます。刺された後の皮膚反応自体に個人差があることや、同じ部屋で生活していても刺されない人もいることから、家庭内に同じ症状の人がいなくても、刺虫症を否定する根拠にはなりません。ペットからの感染やベッド上に置くたくさんのぬいぐるみ(マスコット)などの管理に気をつけて頂きたいと思います。治療は、症状(主に痒み)に個人差がありますが、抗ヒスタミン剤やステロイド剤の外用薬、抗アレルギー剤の内服が使われます。マダニ刺症では、患者の体に虫がついて来院されるものですが、ツツガムシ病、日本紅斑(こうはん)熱(ねつ)なども知られていて、田畑や庭木や草花に触れる機会が多い方々には、たかが虫さされといっても油断できません。痒みの軽いうちに、治療を開始し、「痒疹(ようしん)」にならない様に、皮膚科を受診される事をおすすめします。

健康一口メモ6月号『本当は怖い骨粗鬆症の話』を掲載いたしました

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 「骨粗鬆症」と聞くと皆さんはどのような印象を持ちますか?「お年寄りの病気」、「女性がなる病気」、「背が低くなる」など、人によってイメージはまちまちだと思いますが、「生命予後に関わる重大な病気」と考える方はあまりいないのではないでしょうか?もちろん骨粗鬆症で直接亡くなることはまずありませんが、それによって起こる状態によっては「生活の質」、「生命予後」が大きく変化してしまうのです。
 骨粗鬆症が大きく関係する骨折が4つあります。症状としては1)腰曲がり、身長低下2)股関節の骨折、3)肩の骨折、4)手首の骨折です。それぞれ転倒で起こることが多いのですが、1)は重いものを持って起こることもあれば、いつの間にか進行していることもあります。これらの問題点は、それぞれが生活の質を大きく落としてしまう可能性があることです。背骨が曲ると前屈みになり転倒しやすくなりますし、また逆流性食道炎という胃腸の病気にもなりやすくなります。股関節の骨折では歩行能力が落ちてしまい、活動範囲が狭くなりますし、肩の骨折では衣類の脱ぎ着やトイレ動作にも支障が出てしまいます。また、手首の骨折は握力の低下を起こしてしまいます。それぞれ、短期的には命に関わらないと思うかもしれませんが、生活の質が落ちることは結果として寿命を縮めてしまうことに繋がります。
 現在はたくさんの薬が開発され、以前では望めなかった成果が出るようになっています。でも、本当は薬で骨粗鬆症を治すのではなく、骨粗鬆症を未然に防ぎ、ひどい骨粗鬆症を起こさないことが大切です。日本人の寿命が伸びている中、骨粗鬆症を完全に無くすことはできませんが、骨粗鬆症への進行を遅らせることにより、健康で楽しい人生を送る一助になることは間違いありません。高齢者だけでなく、比較的若い女性や男性でも起こっていることがありますので、ご自身の骨密度に関心を持っていただくと良いと思います。

健康一口メモ4月号『危険ないびきについて』を掲載いたしました

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 いびきは睡眠中に落ち込んだ舌で空気の通り道が塞がれ、狭くなった箇所の空気の出入りで周囲の組織が震える事で生じます。
 いびきには比較的安全な「単純いびき症」と、命に関わる危険のある「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」、これら二つの中間状態である「上気道抵抗症候群」があります。
 単純いびき症ではいびきをかいても熟眠でき、寝起きも良く、あまり問題ありません。
 睡眠時無呼吸症候群では常時大きないびきをかき、呼吸がしばらく止まり、その後またいびきが再開します。
 上気道抵抗症候群では無呼吸こそ伴わないものの、空気の通り道の狭さで呼吸がしづらくなるため、激しいいびきとともに睡眠の質が低下し、日中の強い眠気や集中力の低下など、睡眠時無呼吸症候群と同様の症状が現れます。
 睡眠時無呼吸症候群では無呼吸になっている間の窒息状態と、いびきをかいている間の低呼吸とによって睡眠中は低酸素状態になります。この状態が一晩中かつ連日続くため、体の負担は相当なものです。この負荷によって高血圧や糖尿病などの生活習慣病となり、脳卒中や心血管系疾患を引き起こすリスクが上がります。
 強いいびきが続いている状態は、一緒に寝ているパートナーにとっても危険な場合があります。睡眠時無呼吸症候群のいびきは毎日続くため、一緒に寝ているパートナーは慢性的な寝不足に陥る傾向があります。この慢性的な睡眠の質の低下は、生活習慣病の発症やうつ、認知症といった精神疾患、慢性頭痛、その他にも日中の眠気や集中力・作業効率の低下、といった悪影響を招きます。
 「自分は大丈夫」「所詮ただのいびき」こう思われる方も少なくないと思いますが、いびきの程度や、どの程度身体への影響が出ているかはきちんと調べてみないとわかりません。他者にいびきを指摘されたような方は安易に自己判断せずに、まずは相談しやすいお近くの先生に一度相談してみる事をおすすめします。

健康一口メモ3月号『CKD(慢性腎臓病)』を掲載いたしました

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 腎臓は老廃物や毒素を尿から体の外に出すという大切な働きをしていますが、この他にも血圧の調節や骨を丈夫にする、貧血にならないようにするといった役割ももっています。
 CKDは腎臓の働きがゆっくりと悪くなる病気を指し、慢性腎臓病ともいいます。いったん腎臓の働き(機能)が悪くなると元には戻らず、また、悪くなっても本来の機能の10%くらいに落ちてしまうまでは症状がほとんどないため気づかれにくいという特徴もあります。腎機能が10%以下になると全身がむくんだり、だるくなったり血圧が高くなるなどの症状があらわれて命の危険にもつながります。
 現在はこのような腎不全になっても「透析」という人工腎臓のような装置を使うことができるので命の危険はありません。しかし、血液透析の場合、1回4時間、週3回の治療を一生受けなければいけません。これは本人にとっては大きな負担です。またその手前の段階のCKDでも心臓に悪い影響を与えてしまいます。
 全世界で慢性腎臓病が増えており、今後も増えることがわかったことから2002年にCKDという言葉が作られました。CKDは慢性腎臓病の英語の略語ですが、こちらの方が覚えやすいというわけです。我が国でもCKDという言葉がよく聞かれるようになりました。特に透析治療は医療費がとてもかかるため国が本気になって対策に乗り出しています。
 CKDは尿検査でタンパクが検出されるか、血液検査で腎臓の働きが落ちていないかを調べることで診断されます。日本では成人の7人に1人がCKDと言われています。そのほとんどが軽症ですがなるべく早く治療を始めることが将来の腎機能悪化予防の唯一の方法です。ちなみにCKDの原因の代表的なものが糖尿病で、高血圧によるものも増加しています。検診などで指摘された場合には決して放置せずなるべく早くかかりつけ医に相談することを強くお勧めします。CKDという言葉、覚えおいてください!

お盆期間中の診療状況 調査一覧(令和6年)

健康一口メモ1月号『子供の視機能障害』を掲載いたしました

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 人の視機能は3歳頃までに急速に発達して6〜8歳頃に完成し、生涯の視力が決まります。
 生まれたばかりの時の視力は光覚弁(光がわかる程度)、生後3か月頃で0.05、1歳で0.2、2歳で0.4、6歳までに1.0程度に到達します。通常の視力検査では、正常に発達している子どもであっても3歳0か月では約半数しか1.0の視力に達せず、5歳でようやく8割の子どもが1.0の視力に達するとされています。そこで3歳児健診では0.5以上を正常範囲とされています。
 外の世界の情報は外からの光として眼球の中の網膜で感じて視神経から脳の中を通って後頭葉という脳の後ろの部分で視覚情報として受けとることができます。
この場でご紹介するのは子どもの視機能障害として多い「屈折異常弱視」です。
屈折異常弱視とは主に遠視や乱視が原因で網膜にピントが合わず、後頭葉がピントが合った視覚情報を得られないために視機能の発達が妨げられてしまうことによって起こります。8歳までに発見できず治療を受けられずにいると一生1.0の視力を得ることができないため早期発見が重要視されています。一般的には3歳児健診の視力検査や屈折検査で発見されることが多く、それを逃すと就学時健診や小学校での視力検査を受けるまで見つけることができません。3歳児健診での検査は、従来は家庭での視力検査のみで判定され屈折異常弱視が見逃されることが問題ではありましたが、近年は「フォトスクリーナー」という器械を使用することにより、他覚的に検査出来るようになり屈折異常の見逃しが減り早期発見に大変役に立っています。国からの補助金も下りることになり「フォトスクリーナー」を導入する自治体が増えています。
 治療として眼鏡をかけることとなりますが、眼科を受診して検査を受けることで本人に合った眼鏡を作ることが出来ます。視力の改善に左右差がある場合は見える眼をアイパッチなどで隠して、見えない眼で見させる「健眼遮閉」という治療が必要になる場合もあります。

健康一口メモ12月号『爪白癬(つめはくせん)について』を掲載いたしました

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爪を見たときに白く濁っていたり厚く脆(もろ)く変形してきているようなら爪(つめ)白癬(はくせん)の可能性が高いでしょう。
カビ(真菌)の一種、白癬菌感染による疾患で、爪(つめ)病変部(びょうへんぶ)の組織を鏡検もしくは培養し確定診断されます。日常的に爪が蒸れた環境下におかれていたり、靴による圧迫等で慢性的に外傷を受けている状態が発症の契機につながります。足(あし)白癬(はくせん)から続発するケースも多く、一度感染すれば難治であるためできるだけ早期に治しきることが肝要です。
治療としては数年前に従来の薬剤より効果の高い内服薬がでました。他薬剤との併用も問題なく、副作用も少なくなっている印象があります。ただ感染から長期間経過し重症化してしまうと完治しづらくなってしまいます。
類似の症状を呈する疾患に爪カンジダ症があり正しく診断されないとカビの薬には白癬菌しか効かないものもあるので注意が必要です。また誤診されやすい疾患として感染とは別の原因で生じる、爪甲鉤弯症(そうこうこうわんしょう)、乾癬(かんせん)、苔癬(たいせん)といったものが挙げられます。
ほぼ自覚症の無い爪(つめ)白癬(はくせん)は、重度になるまで放置されやすい病気ですが、爪を見ておかしいと感じたら、手遅れになる前にすぐ専門医へかかることをお勧めします。

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